狡兎死走狗烹(こうとししてそうくにられる)〜1
とーとです。
大切な人を喪くしましたが、くさびとなる存在を失うと、人同士のつながりもとだえてゆくのかなあと、さびしさと、やるせなさを感じて、うつ状態です。
喪った人の、存在の大きさを、改めてかみしめています。
さて、今回は「狡兎死して走狗煮られる(こうとししてそうくにられる)」について、話す。
本文は、
「狡兎死して走狗煮られ、飛鳥尽きて良弓蔵し、敵国破れて謀臣滅ぶ」
長いので、ふりがなをふるのをやめた。なんとなく、意味はわかるのではないかな。
ずるがしこいうさぎが死んだら、猟犬は煮て食べられてしまう。
鳥がいなくなれば、立派な弓も、蔵の中にしまわれてしまう。
敵の国が滅んだら、作戦を立てる優秀な部下は粛正されてしまう。
これは、「劉邦(りゅうほう)」が天下を平定した後、大きな勢力を持っていた「韓信(かんしん)」が、危険な存在になったので、その力を奪い、一国の王様から、小さな領地の領主に格下げした。
その時に、「韓信(かんしん)」が言ったとされる。
「劉邦(りゅうほう)」は、ライバルの「項羽(こうう)」を倒して、優秀な将軍が、今度は自分を脅かす存在になることを恐れ、それまでの部下たちに、疑いの目を向けるようになる。
もともと、「韓信(かんしん)」は独立の兆しを見せていたから、真っ先に力を削られる対象になったんだろうね。
なにせ「国士無双(こくしむそう)」だから、危険視された。
この言葉は、もともと、先に話した「呉越同舟(ごえつどうしゅう)」の話に出てきた、「越(えつ)」の国が、ライバルの「呉(ご)」を滅ぼした後に、その家臣の間で交わされた会話でもある。
ひとつの目的が達成されると、それまでの部下が、優秀であればあるほど、自分にとって危険な存在になるというのは、歴史の中で、語られていること。
よくあるのは、共通の敵がいなくなると、それまで手を携えて戦っていた味方同士が、仲違いして、争いになってしまうことだ。
それこそが「呉越同舟(ごえつどうしゅう)」の逆パターン。
船が港に着いたら、もともと仲が良くなかった人同士は、けんかをはじめるだろう。
中国が、昔、日本と戦争をしていた時代に「共産党」と「国民党」が手を組んで日本と戦った。
もともと、この両者は、考え方の全く違う人たちだったので、日本が戦争に負けると、たちまち、内戦状態になる。
「共産党」が中国本土を勢力下におさめ、「中華人民共和国」を樹立。
「国民党」は台湾に亡命政権をたてた。
この状態が、紆余曲折を経ながら、現在にまで続いている。
人というのは、難しく、悲しいものでもある。
それまでの強い絆が、状況の変化の中で、たもとを分かったり、ときには争いあったりするようになるのだ。
NHK大河ドラマ「西郷どん」の西郷隆盛と大久保利通はどうなって行くのか、下書きをしている今の時点では、どのように描かれるのかわからない。
「劉邦(りゅうほう)」の家来たちの中には、粛正されてしまった人も多かったが、地位も、領地も辞退して、安泰を得た人もいた。欲を見せないで、相手を安心させたんだね。手柄をたてても、かえって身の危険になる。生き残るのもなかなか難しい。
この続きは次回。
今日はここまで。